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■駅前屋台で愛されたワンタンこそ、福島市の中華料理の原点

明治から大正にかけて、鉄道の開通と共に町の発展期を迎えた福島市。

そんな福島の北の玄関口・福島駅を当時賑わせていたのは料理の屋台。駅の東口に無数の屋台が軒を連ねていた中、人気を博していたのがワンタン。昭和3年には「福島雲呑露商組合」も結成されていることから、屋台の名物として認知され、多くの方に親しまれていたことが伺えます。

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そんな屋台街を取り仕切っていた方が営んでいた、ラーメンとワンタンの屋台。そこは「神田軒」の屋号を掲げ、数多くのお弟子さんを使っていたそうです。

元々、群馬の織物工場で働いていた遠藤竹蔵さんもその一人。山形生まれの母親に呼び戻されて福島に戻り、神田軒に弟子入りして屋台を開業し、チャルメラを吹きながらラーメンやワンタンを売り歩いていました。

実直な仕事ぶりと料理の味が評価され、親方から受け継いたのが「マルイチ神田軒」の屋号。この時代、神田軒の屋号がついた屋台が何軒かあった中、一番弟子である竹蔵さんに与えられた特別なものです。

その後、大正13年に店舗を構え、昭和2年ごろに現在の場所にお店を移転。福島市内に残る最古のラーメン店として、今日も暖簾が受け継がれています。

■昭和の活況を支えた二代目と、三代目の静かな矜持

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「この界隈には大学が数多くあったので下宿屋が多かった。なので、人の数も多く立地としても申し分ないと考えたようです」

そう語るのは三代目の晴男さん。

元々、報道カメラマン志望だった晴男さんですが、「俺は長男で男一人。死んだら暖簾が潰えてしまう」そんな強い思いもあって高校卒業後に上京し、修行先の中国料理店で研鑽を積みました。

道路に面する大きな看板に掲げられるのは、ラーメン、ワンタン、中華、和食と、時を経て厨房に培われてきた料理の数々。屋台時代の二代看板に加える形でメニューを発展させたのが、竹蔵さんの三男の正晴さん。暖簾を継ぐ前は東京でエンジニアの仕事をしていた二代目は、昭和24年ごろから日本そばを始めて、レパートリーを増やしていきました。

幼い頃から正晴さんの仕事ぶりを見ていた晴男さんは「とにかく大変そうだなぁと。その姿を見ていると自分も落ち着かなかった。」と、当時を振り返ります。

「昔はもっと日常的に忙しかった。特に、昭和30年台は好景気もあって誰もが高揚していた時代。そんなに安くなかったはずのラーメンなのに、職人さんも下宿の大学生も学校帰りの高校生も、こぞって店を訪れて食べていたんです」

■いわば、ここは小麦のワンダーランド!

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「ウチの料理は特長がないのが特長。それが食べ飽きないということ」

神田軒のスタイルで作り出される料理が並ぶメニュー。そこにはラーメンやワンタンはもちろん、正晴さんが生み出した『冷やしラーメン』と『あんかけ焼きそば』といった気になる料理も。

「冷たいそばをヒントに編み出した」という冷やしラーメンと、「二代目が東京で食べた料理の記憶を思い起こしながら作った」というあんかけ焼きそば。どちらのメニューも気になるところ。でも、やはり礎たるワンタンは外せません。

「初代の頃、スープの出汁には豚骨よりも安価だった牛骨を使ってましたが、牛骨が高価になってから豚骨を使うようになりました。屋台の時代はスペースにも限りがあったので、あらかじめタレと濃縮した豚骨の出汁を混ぜたものをお湯で割って、スープを作っていたんです。今はこれを地鶏の出汁で割って出しています」

今も「二ヶ月に一度、100キロの豚骨を使って作る」という晴男さん。屋台時代の製法を守り抜いています。

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一日の仕事を終えた夜、製麺部屋に一人籠もって作るワンタン。正方形の皮を手に持てば、繊細な感覚が丁寧な仕事ぶりを教えてくれます。その一角にひき肉の餡を乗せて包み込み、皮同士を貼り合わせています。

「当時の屋台に冷蔵設備なんてなかったので、傷みやすいひき肉は使わなかったはず。だから、店を構えるようになってから、生地にひき肉を足すようになったのでは」

餡には豚を経て現在は地鶏を使っていますが量は控えめ、やはり主役は皮です。おそらく全国的に見ても珍しいこの製法。茹であがりが待ちきれません。

■ワンタンがもたらす口福と、初めて尽くしの冷やしラーメンとあんかけヤキソバ

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「ウチのワンタンは皮を食べるもの」

自信に満ちた表情で晴男さんが語るワンタンが入った器。透明感のある琥珀のスープに泳ぐ優雅な姿は、まさに雲の字のごとくです。

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お箸で引き上げれば、生地の滑らかな質感が箸越しに伝わり、口に運べば舌に触れた瞬間にぷるっと震え、歯で噛みしめんとするとフワリと押し返す。数秒のうちに驚きが重なって、口福度が一気に高まります。

ゆっくり食べても生地が伸びることなく、最後の一枚までしなやかなハリを約束してくれるのも嬉しいところ。お肉の弾力と皮のメリハリにうっとりしながら、大きくジューシーなチャーシューやメンマを合間に挟みながら楽しみましょう。

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そして、こちらが冷やしラーメン。こちらも主役は麺だと言わんばかりに、きゅうり、薄焼き卵、そして紅しょうがのシンプルスタイル。

角がしっかり立った麺を啜れば、ワンタンと真逆のたくましく力強い食感。一般的な冷やし中華と違って、和風仕立てのスープがしっかり絡みます。

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トリを飾るのはあんかけヤキソバ。逞しい麺に絡む醤油ベースの餡には、豚肉、白菜、卵、タケノコの姿。しっかりと味つけされた餡に酢のさっぱりした食後感。これがリズムを生み出します。

■屋台の歴史と小麦の技は、今日も次代へ受け継がれる

現在、晴男さんと一緒にお店に立つのは奥様の順子さん、そして長男の丈晴さんと三男の貴之さん。

ワンタンづくりを始めとしたマルイチ神田軒の仕事のように、きっと丁寧な仕事こそが福島中華の一番の特長。昔ながらに作られているからこそ新しく感じる味が、今日も厨房で受け継がれています。


【お店情報】
創業年:大正13年(取材により確認)
住所:〒960-8011 福島県福島市宮下町3-11
電話番号:024-534-4831
営業時間:11:00~21:00
定休日:木曜日
主なメニュー:ワンタン(550円)/ワンタンメン(650円)/ひやしラーメン(600円)/あんかけヤキソバ(700円)
ウェブサイト:http://kandaken.grupo.jp/
facebook:https://www.facebook.com/m.kandaken/
※店舗データは2016年4月9日時点のもの、料金はすべて税込み。

〒960-8011 福島県福島市宮下町3-11

プロフィール

百年食堂応援団/坂本貴秀
百年食堂応援団/坂本貴秀ローカルフードデザイナー
合同会社ソトヅケ代表社員/local-fooddesign代表。内閣府を退職後、ブランディング・マーケティング支援、商品開発・リニューアル、コンテンツ企画・撮影・執筆・編集等各種制作を手掛けている。