神武食堂−01

■四代に渡る賑わいは、勇ましく、神々しく

神武食堂−01
運がよければ、電車の発着時に目が光る瞬間が見られるかも!?

巨大な遮光器土偶が駅前通りを見つめる、JR五能線木造(きづくり)駅。

かつて、貨物の積み下ろし駅として賑わい、駅前には馬車が列をなしていたこの場所で、神竹次郎(じん たけじろう)さんが食堂を始めたのは大正13年のこと。うどんやそばに焼き魚などといった料理が、お客さんの胃袋を満たしていました。

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暖簾の中心には家紋の「木瓜紋」が、右下をよく見ると…?

その後、厨房に入ったのが二代目となる武男さん。お酒が好きで歌が上手く、要職につく人望も有していました。初代と共に厨房に立つ日々を経て、独り立ちの時を迎えた昭和22年。食堂に自身の名前から「神武食堂」の屋号をつけました。

一旦は食堂の建物が火事の被害に遭ってしまい、営業を止めたこともありましたが、現在の場所にお店を移して再開。テレビ放送の開始を迎えて、汽車を待つまでの間に相撲を観戦する人たちや、汽車で高校に通う学生さんによって賑わいに包まれていました。

また、海軍に所属した経験もあって、「汽車に乗る学生さんが駅に到着する頃に軍艦マーチを流して、気合を入れていた」こともあるそうです。

そして、三代目の武彦さんがお店を継いだのは、中学を卒業してすぐのこと。当時の流行を反映してチキンライスやオムライス、カツライスといった洋食メニューがお目見えしたのもこの頃でした。

■東京での修行が生み出した、四代目の味

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現在、四代目として厨房に立つのは祥仁さん。お話を伺うその顔には、頼もしい兄貴分としての風格と、子煩悩な一面を持つ優しさに満ち溢れています。

子供の頃、お店の手伝いをするのがあまり好きではなかったそうですが、暖簾を継ぐ決心をして東京へ。中華料理の修行を経て食堂に戻られ、厨房に立ち続けること20年以上になります。

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食堂の歩みが凝縮された現在のメニューには、そばやうどんといった開業当時の主役はもちろんですが、二代目が始めた中華麺とご飯物がズラッと並びます。特に、原点となった中華そばのスープは二代目が生み出したレシピが受け継がれ、今もお店の顔。

そんな中で、人気のメニューが担々麺。「東京での修行時代にハマった」というものだけあって、四代目の思いが強く込められた一品。

また、手もみ中華もオススメとのこと。麺には南部小麦を使い、スープは青森産の鶏ガラや、にんにく、そしてガーリック豚といった青森の旨みに煮干の出汁を合わせたもの。

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となれば両方とも食べたくなるものですが、そんな時、目に止まったのが壁に貼られたハーフセットのメニュー。そこに見つけた「チャーシュー丼」の文字に食欲を掻き立てられれば、注文しない理由はありません。

ということで、手もみ中華まで全部まとめていただきます!

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頭の中に入った料理が完成するまでの流れに合わせて、作業台には調味料や料理が盛られる丼がスタンバイされてます。

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使い込まれたフライパンの中で、油を纏いフワフワと黄金色に輝く卵焼き。

大きな釜の中に手揉みの麺を泳がせて、担々麺や手もみ中華のスープを丼に注ぐ。四代目のお母様と共に、小さな厨房の中でおいしさが実直に作られます。

■刺激と旨みがたまらない!ハーフセットと手もみ中華

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どちらか食べようか目移りしつつ、香りに誘われて担々麺からいただきます。

鶏がらスープにしっかり溶けこむ芝麻醤のまろやかなコクを、盛り立て引き締める辣油の辛さと花椒の刺激。一瞬で軽やかにして鮮烈な余韻を残します。

滑らかな口当たりの麺をすすりつつ、ひき肉と刻みザーサイの肉味噌とシャキシャキのもやしをモグモグと噛みしめれば、染みこんだ醤油ベースの味とスープのおいしさが相まって、「うまい!」と言わずにいられません。

次に箸を伸ばすは、もちろんチャーシュー丼。

一口大のチャーシューは、ほんのりと甘めの専用タレが中まで染みこみ、噛みしめるほどに豚肉のエキスとともに溢れ出してきます。

もう一つの主役・卵焼きの箸越しに感じるのは、まるで羽毛布団のようなフワフワ感。ふわっと香るネギが際立てる究極の濃淡の組み合わせに、ご飯が止まる理由がありません。

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こうなれば、手もみ中華への期待値も高まります。

青森の旨みがブレンドされたスープを引き締める、醤油タレの香りと塩加減。すーっと広がるコク深く飽きの来ない味に、スープを飲むレンゲは動きっぱなし。

そんなスープがしっかり絡んだ手もみの麺を啜れば、口当たりの心地よさと共に極上のおいしさが押し寄せてきます。

大ぶりなチャーシューに、たっぷりのネギとメンマ、そして津軽のラーメンに欠かせないお麩。安心感のある具材が器を彩り、麺を啜る喜びをこの上ないものにしてくれます。

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ここで、サービスとして作っていただいたのがレバニラ炒め。

素揚げしたレバーと、モヤシとニラといった野菜が、醤油ベースの味付けを纏って登場。

強火できりっと引き締まった歯ざわりに脱帽したら、ごはんはもちろんビールが恋しくなるのは当たり前です。

■みんながここに帰ってくる

「この食堂は、みんなが帰ってくる場所なんですよ」

汽車で駅に帰ってきた学生で賑わっていた食堂。久しぶりに故郷に帰ってきた方を暖かく迎える食堂。時代は変わっても食堂の役割が変わることはなく、おいしいの言葉と笑顔で満たされる空間。

いわば、ここはもう一つの家庭の食卓。今日も四代目はみんなの帰りを待ちながら、厨房で腕を振るいます。


神武食堂

創業年:大正13年(取材により確認)
住所:〒038-3157 青森県つがる市木造宮崎1-10
電話番号:0173-42-3421
営業時間:11:00~19:00
定休日:火曜日
主なメニュー:担々麺(700円)/チャーシュー丼(750円)/手もみ中華(600円)/ハーフセット(800円)/レバニラ定食(780円)
※店舗データは2016年2月29日時点のもの、料金はすべて税込み。

〒038-3157 青森県つがる市木造宮崎1-10

プロフィール

百年食堂応援団/坂本貴秀
百年食堂応援団/坂本貴秀ローカルフードデザイナー
合同会社ソトヅケ代表社員/local-fooddesign代表。内閣府を退職後、ブランディング・マーケティング支援、商品開発・リニューアル、コンテンツ企画・撮影・執筆・編集等各種制作を手掛けている。