夜の弘前、春の主役がピンク色の花なら秋の主役は濃厚な紅葉色。
季節の移ろいを色で感じさせる弘前公園のお濠から歩いてしばし、久しぶりに訪れたのは津軽が誇る中華系百年食堂・来々軒。
昼間は近隣で働く人の胃袋を満たさんと、開店時間から混雑が止まないこのお店、「それと比べれば夜は入りやすいかなぁ…」と思ってみたら、ガラス戸の先は大盛況。
高校野球の練習を終えた学生さんたちは、ラーメンにチャーハンといったボリュームしっかりな組み合わせを頬張り、若い夫婦はゆっくりと餃子や酢豚を堪能中。楽しみ方も百人百様、中華版サードプレイスとしてどの時間も賑わいに包まれていました。
前回訪問時に食べたのは自家製麺のラーメンと裏メニューの塩焼きそば。ただ、実はその時から気になっていたのが麻婆飯。白いごはんが熱々の麻婆豆腐がたっぷり覆われた姿を想像するだけで…!っていうもんです。
でも、自家製麺の啜り心地も堪能したい…そこで注文したのはマーボーラーメン。
カウンター越しに見えるのはガスコンロから吹き上がる大きな炎、厨房では三代目の鈴木順司さんと未来の四代目となる息子さんが、絶え間なく入る注文を手際よく仕上げていきます。
「マーボーラーメンおまたせしました〜」
眼の前に姿を現したのは、たっぷりの麻婆豆腐が丼を覆う一品。さっき見てきた紅葉のごとく、食欲の秋のピークにふさわしいビジュアルです。
レンゲで麻婆豆腐を口に運べば、トゥルンと滑らかな舌触りの豆腐と餡。最初は旨さを感じる餡からは唐辛子の辛さがじんわりと。熱々のコンディションも手伝って身体からじわりと汗を感じながらも、ひき肉やネギといった豆腐を盛り上げる具材の香りやコクに引き寄せられて、思わず汗を拭うのと麺を食べるのを忘れそうになります。
もちろん、こちらも自家製麺。細めの平打ち麺をすすって噛めば、まるで細マッチョなボディビルダーのような弾力に驚くしかなく、手が止まることがありません。口当たりが気持ちいいんです。
そうなれば、先に食べ終えてしまうのは麺のほう。器に残った麻婆豆腐の旨味が溶け込んだスープ。ということは…
やるべきは茶碗一杯分の小ライスを注文して丼にすることだけ。「ウチのお客さんは、みなさんそうやって召し上がるんですよ」と、お墨付きのお手製スープ麻婆丼。あっさり系のラーメンスープのコクとタレがごはんに染みれば、全力でかっこむのが正解です。
結局、最後までスープを飲み干したところでごちそうさま。まるでひつまぶしのように3つの食べ方で楽しめるマーボーラーメンと小ライス、これぞ秋冬の津軽に欠かせない活力源です!!
前回来々軒を訪問した記事はこちらからご覧ください。