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■提川、明治の賑わい。

八甲田山からむつ湾に流れる提川。この川沿いに店を構える食堂が「平田屋」です。

明治24年に東京と青森を結ぶ東北本線が開通し、その2年後に提川の近くに浦町駅が開業。映画館や芝居小屋などが立ち並ぶ界隈は、青森市の賑わいの中心地となりました。

「魚市場や焼肉屋さんがあったり、昔、この界隈は大渋滞が起こるような場所だったんです」

四代目の平田欣也さんに昔の堤町のお話を伺うと、熱く語る姿に当時の情景が目の前に浮かんでくるようでした。

■「武士の商法」から「平田屋の商法」へ。

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元々武士だった初代・乙之助(おとのすけ)さんが、廃藩置県で弘前から移り住み商売を始めたのは明治22、3年のこと。欣也さん曰く「武士の商法」として、今も受け継がれる「平田屋」の屋号で魚屋や仕出し屋を営み、明治35年に今の礎となる蕎麦屋を始めました。

その二代目として継いだのは喜三郎さん。厨房に立ちつつも魚の行商もしており、「大八車に魚を積んでは色々な場所に売り歩いていた」そうですが、昭和24年に他界してしまいました。

そこで、当時残された8人兄弟を食べさせるために、三代目として継いだのは高校生だった祐蔵さん。想像できない苦労の中で、必死に暖簾を守ってきました。

「お店を継ごうとは考えていなかった」という欣也さん。食の道に進むきっかけとなったのは、くしくも高校三年生の時。三代目であるお父様が亡くなってしまったのです。

その後、調理師学校を経て様々なお店で研鑽を積む間、お店の看板を守っていたのは三代目の弟さん、そして三代目の奥様でした。

「一時期、母親も厨房に立っていたことを考えると、自分は五代目とも言えるのかもしれない」

その言葉には食堂を守り抜いてきた両親、そして名刀のごとく磨き上げられてきた、比類なき「平田屋の商法」を培ってきた先代に対する愛が詰まっています。

■「新しすぎてもダメ、古すぎてもダメ」

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町が賑わいに包まれていた時代には、人づてに「太宰治が食べに来ていた」という話も聞いたというこのお店のメニュー。

初代から受け継がれるそばとうどんの文字に始まり、ここに鍋焼きうどんが加わったのは二代目の頃。青森県内の中でも比較的早かったそう。

「メニューには今の食生活にあったものと流行を併せ持ってないとだめ。 古いものはそのまま残していかなきゃだめだけど、新しいものも常に追いかけないと。でも、新しさだけを追っても平田屋の味ではなく、単なる新しいものになってしまう。」

ずらっと並んだ料理の数々。それは時代と共に生まれ、時代の中で残ってきたものばかりです。

■寝かせたタレが決め手!力みなぎる「バラ焼き定食」

そんな中でも、特に注文の多いメニューの一つが「バラ焼き定食」。

「元々、力仕事をされている方や、サラリーマンに腹いっぱい食べてもらいたいという、三代目の気持ちから作られたメニュー。 にんにくの皮を剥いたり、生姜を擦ったり。タレは一から手づくりするタレをしっかり寝かせてから使っています。」

東京オリンピックより前に三代目が考案したレシピが、今日も受け継がれています。

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バラ焼き定食の材料は、主役の豚バラに、キャベツ、もやし、にんじん、長ネギ。中華鍋で十分に炒められたところで秘伝のタレを注ぐと、厨房いっぱいに食欲をそそる香りが広がります。

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運ばれてきた定食を見て驚きました。おかずもごはんも一人前とは思えないボリュームです!

すっきりした生姜の香りが鼻をくすぐる中、アツアツのところを頬張れば、野菜の瑞々しさ豚肉のエキスにしっかり絡んだ甘辛のタレ。にんにくのコクが相まって一口ごとにご飯を呼び込みます。

なるほど、どうしてこんなにも大盛りなのか。それは、一口食べれば箸が止まらないことをわかった上で、サービスされているんです!

もちろん、しっかり目の味付けはビールとの相性も抜群。単品おつまみメニューでも食べられるのが嬉しい限り。家の近所にあったらふらっと入って、ビール片手につまみたくなる。人気の理由に納得の旨さです。

■両親、そして親友と共に。

平田屋の屋号は、幾多の苦労を乗り越えて四代目に受け継がれています。

「父とお店を支えてきたお客さんの存在の大きさを感じます。お客さんにここに来たいと思わせたのはやっぱり凄い」

そんな想いと共に、暖簾を継ぐ励みになっているのは友への想い。

ある日「こんな料理が食べたいんだけど作れない?」と、親友から頼まれて一つの料理を生みだした欣也さん。

それから一年後、その親友の方は亡くなってしまいましたが、約束の料理は「ウドンナポリタン」としてメニューに残り、誕生のエピソードを知る方からは、親友の名前を冠した「カワゴエナポリタン」の名前で注文されます。

お客さんからの”美味しかったよ、ありがとう”の言葉は、大切な人との出会いが生み出した最高のメッセージなのかもしれません。


平田屋

創業年:明治22〜23年頃(取材により確認)
住所:〒030-0812 青森県青森市堤町1-11-9
電話番号:017-734-5531
営業時間:10:30~19:30
定休日:第一、第三水曜日
主なメニュー:バラ焼き定食(普通・780円 特・1,000円)/バラヤキ(おつまみ・650円)/中華そば(500円)/昔風ラーメン(500円)/ウドンナポリタン(650円)
※店舗データは2016年2月29日時点のもの

〒030-0812 青森県青森市堤町1-11-9

プロフィール

百年食堂応援団/坂本貴秀
百年食堂応援団/坂本貴秀ローカルフードデザイナー
合同会社ソトヅケ代表社員/local-fooddesign代表。内閣府を退職後、ブランディング・マーケティング支援、商品開発・リニューアル、コンテンツ企画・撮影・執筆・編集等各種制作を手掛けている。