石田謙輔さん
Ishida Kensuke
プロデューサー
広告代理店でメディアビジネスプロデュース局メディア営業チームに所属。入社時からの勤務地である赤坂で職場のメンバーと飲みにいくことも多い。好きな食べ物が多すぎて、好きな食べ物TOP5がなかなか決まらないことが悩み。お酒も大好きで、最近はジン+ソーダ+オリーブ(瓶)を自宅で飲むのがお気に入り。
今回お店を紹介してくれるのは、広告代理店に勤める石田謙輔さん。仕事上の付き合いを含め、いろいろな飲食店を訪れることが多い石田さんが教えてくれた行きつけは、東京・赤坂にある中華料理店「金葉庭」さん。テレビ局や芸能事務所が周囲には多く、一般人だけでなく、芸能人も訪れる老若男女に親しまれている街中華だ。数ある店の中でも、金葉庭は石田さんにとってどんな行きつけなのか。その魅力を教えてもらった。
全方位的においしい。初来店で店の虜に

「実は、行きつけになったのは最近なんです」。そう話す石田さんが店を訪れたきっかけは、食通の会社の上司。

「飲食店をよく知る上司が、赤坂でランチをするならココという店の一つが金葉庭だったんです。以前から店の存在は知っていたのですが、足を運んだのはその話を聞いてから。初来店は夜でしたが、一度行ったら大好きになりました」

石田さんが初来店で金葉庭を行きつけ認定した理由。その一つが、絶対的な信頼のおける料理のおいしさ。

「まず、お通しのおいしさに感動しました。豚の耳を使った料理でしたが、おかわりをしたくてお店のお母さんに聞いたら、その料理はお通し限定で。じゃあ他のメニューをと、餃子やエビチリ、麻婆豆腐、角煮といろんなものを注文したんですが、どれもめちゃくちゃおいしいんですよ」

看板メニューの「ちゃんぽん」は、海鮮と野菜の旨味が染み込んだスープはやさしく、ほっとする味わい。

結局、初来店で店のほとんどのメニューを食べたという石田さん。〆に食べたのは、店の看板メニューでもあるちゃんぽん。やさしい味付けで、散々食べて満腹であるにも拘わらず、しっかり食べてしまったという。翌日、今度は昼間に訪れて、ちゃんぽんと並ぶ人気メニューである皿うどんも食べた。数日前までよく知らなかったお店が、石田さんの中で一気に行きつけに変わった。

ちゃんぽんと並ぶ人気メニュー「皿うどん」。関東では酢とカラシをつけて食べる客が多いが、本場長崎ではソースをかけるのが定番。ソースをかけて食べている客を見ると、長崎市内の人だと察するというご主人。

喜んでもらうために
ただ、おいしく作る

夜は冷菜や一品料理など多彩なメニューを提供しているが、実は昼間のメニューは「ちゃんぽん」と「皿うどん」のみという金葉庭。ラインナップを絞る理由は、ストイックなこだわりというよりも店の運営事情による所が大きい。調理人は店主の弥永馨さん一人、ホール担当は奥様。アルバイトスタッフが時々入るが、彼らが休みの時は二人だけですべて対応しなければならず、メニュー数をこれ以上増やすのはむずかしい。

ちゃんぽんと並ぶ看板メニューの皿うどんは、野菜や肉など具沢山のあんが揚げ麺に絡み、そのままでも十分おいしいが、酢とカラシを付けるとまたさっぱり感とピリッとした刺激が加わり、やみつきになる。また、昼にはないが夜に食べられる「牛玉飯」もファンの多い人気メニュー。ご飯に牛肉と卵とじがのったシンプルなメニューだが、熱々のふわとろの卵と牛肉の旨味が混じり合い、箸が止まらない。「家でもできますよ」とのことだが、このふわとろ感とおいしさは店でしか味わえないだろう。

しかし、たとえメニューが二品でも、ランチ時には近隣に勤めるビジネスマンを中心に店は混み合う。さらに芸能人やアーティスト、大企業の社長なども常連として訪れており、メディアなどでも何度も紹介されている。 周囲にはいろいろな飲食店が軒を連ねる中、選ばれる店であり続けている金葉庭。きっと食材や調理法にも強いこだわりがあるのだろうと想像されるが、聞けば意外にも「ごく普通ですよ」という店主からの答え。

「ちゃんぽんのスープに使うのは鶏ガラと豚骨。鶏ガラを三倍の量にして、豚骨はほんの少しだけ。こだわりはそんなにないです。おいしく作って、お客さんに喜んでいただく。それが一番だと思うから、それだけは頭の中に入れて作っています」

金葉庭オリジナルメニュー「牛卵飯」は、昼間は提供しておらず、夜のみ食べることができる人気メニューだ。素早く盛らないと卵が硬くなってしまうからと、火にかけた卵と牛肉をご飯の上に一瞬で盛る店主の見事な中華鍋使いも見物。

「『何年経っても味が変わらないね』と言ってくださるお客様もいます。そういう言葉をいただくと、励みになりますよね」  特別なことは一切しない。真心の込もった変わらぬ味こそ店の持ち味であり、それがおいしさの素になる。

店づくりに滲む
店を支えているもの

店内ではBGMを流しておらず、聞こえてくるのは調理する音と客の和やかな話し声だけ。穏やかな食の時間が流れる。

余計なものがなく、清潔に保たれた厨房。「長持ちさせたいから」と店主が毎日最低5分は清掃をして、自分の持ち場を整えている。

料理人として50年以上のキャリアを持つご主人。奥様とともに新宿・歌舞伎町で約10年、赤坂で約20年、二人三脚で店を営んできた。「24時間いつも一緒。喧嘩もしょっちゅうしてますよ」と笑うご両人だが、長年築いてきた互いへの信頼は厚く、絆も深い。

「私が辞めることになったら、主人は店を辞めるって言うんですよ。調理から配膳、レジまで一人でもできるでしょうけど、そこまでやる気はないんですって」

そう語る奥様のことを「パートナーであり、なくてはならない存在」と言うご主人。二人で元気に店を続けるためにも健康が第一と、ご主人は毎日体操をして、週1で整骨院へ通うなど日々の体のメンテナンスも欠かさない。そんな夫婦の思い合う姿勢とプロフェッショナル意識もまた、客を惹きつける店づくりにつながっているのだろう。客である石田さんも、まさにそうした要素にも惹きつけられた一人。

「芸能人もたくさん訪れるそうなんですが、店にはサインが一切貼られていないんですよ。不思議に思って聞いてみたら、『有名人が来るお店』で勝負していないからだそうです。もらったサインは家で大切に飾っていると言っていました。そう言うご主人を見て、お母さんが『仕事に対するスタンスがかっこいいのよね』と言っていて……お互いにリスペクトし合う姿にも胸を打たれました」

やさしさに満ちた
残したい行きつけ

初来店した時、石田さんがさらに店を好きになる出来事があったという。

「帰り際に『ありがとうございます』と伝えたら、お母さんが『こちらこそ、こんなにきれいに食べてくれてありがとう』と言ってくれて。その言葉にすごくやさしさを感じましたね」

真心の込もった料理、良心的な値段、他にもお客さんに迷惑をかけたくないからと対応に時間を要するキャッシュレスにはしないなど、店を知れば知るほど、店側のやさしさや心配りを感じるという石田さん。その心配りの出所を店主ご夫婦のこの一言が教えてくれる。

「お客さんが食べて、おいしいと言って帰ってくださる。それが何よりもうれしいんです」

食事良し、店の雰囲気良し、そして何よりも店主ご夫婦の人柄が見える「金葉庭」。忙しない日々、疲れた時にふと立ち寄って心とお腹を満たす。石田さんにとって100年残したい行きつけは、都会のオアシスとなりつつある。

店舗情報
金葉庭

住所:東京都港区赤坂3-7-9
電話:03-5570-2626
営業時間:11:30~14:00/18:00~20:30(L.O.)
定休日:土曜 日曜 祝日

弥永馨さん、由子さん

ご主人の馨さんは長崎出身。ホテルの中華料理店で修業を積み、新宿・歌舞伎町で中華料理店をオープン。約10年営業した後、赤坂へ店を移転。以来約20年、この地で夫婦二人三脚でお店を切り盛りしている。

ライタープロフィール
河田 早織
ライター、編集ディレクター。広告業界を中心に、言葉のある場所すべてが活動の場。実は映像制作にも興味がある。趣味は茶道。